干物について
炙って食べると美味しくいただけるものをテーマとしており、干した物に限らず取り扱っております。北海道といえば・・・とすぐに思いつく定番のホッケはその日売り切れるだけの量しか入荷しない為、身質ふくよかさも脂の乗りも申し分なく是非召し上がっていただきたいものです。
干物はどうしても流通上の理由で冷凍しなければならない物も多くありますが、実の所 生の食材より劣化が著しく、味に顕著に現れます。
当店はお客様に鮮度の良い干物を召し上がっていただけるように工夫しています。
炙る干物の奥深さ
~北海道のホッケ~
水産品の流通の中では「生食できる物」⇒「軽い火通しで食べられる物」⇒「しっかりとした焼・煮・揚の調理が必要な物」というような順序で価格に影響してきます。
古来から伝わる懐石料理の献立心得にもこの順序があてはまり、お造りがその日の献立のメインとなることが多いようです。その食材が持つ豊かさを損なわぬよう軽い火通しのみの調理法から、完全に熱を通さねばならぬ鮮度の食材は臭みを消す為に味をしっかりとつけ、焼・揚・煮などの調理法で仕上げられたりするものです。
勿論、これは一般論で全ての魚介類の鮮度が最高の食材であえて加熱調理でもてなす場合も多々ありますので偏見は持たないで下さい。
食材の中で海老や烏賊などの一部には活きている状態よりも死んで日が経つほどに甘みや旨みが増して一番美味しい時を迎えるものがあります。張りのある食感は新鮮な食材ならではの魅力の一つでありそれを楽しまれる方もいらっしゃるでしょう。しかしながら旨みに関しては別問題で口に入れてからの純粋な美味しさ、余韻は味から生まれるものです。
鮮度が落ちてくる=発酵が進み旨みが熟成されてくる というのは伝統的な塩や麹などを使った塩蔵品や熟れ寿司にもあてはまります。
このようなことから単純に食材の鮮度の価値だけでは一番の食べ時は計れないといえるでしょう。
確かに鮮度の良い物は素晴らしいですが、そこからさらに手間と時間をかけ、それに負けぬ味を作り出した事は遥か昔、保存手段の乏しい時代の職人や板前さんの試行錯誤によって培われたものです。
一部の食材には非常に旨み成分や香りの強いものがあり、それを乾燥させたり凍らせたりすることでより一層その特色が色濃くなるものがあります。よく耳にするものでは中華食材の干し貝柱、干し海老、干しアワビ、ハムなどが該当し、素晴らしく強い味・香りのついたスープが産み出されるのはご存知でいらっしゃると思いますが、やはり熟成・発酵・凝縮の賜物です。
食品を凍らせる事についてはご存知無い方もいらっしゃるかもしれませんが、生の椎茸やシジミを一度冷凍してから熱処理すると味・香りが一層強く出るように思われます。
専門家ではないので詳しくは解りかねますが、組織が凍結膨張により破壊され食材の持つ旨み成分が溶け出しやすくなっているのでしょうか?
凍らせた後は食感は弱くなり、味が溶け出した分そのものにはあまり味は残らないように思えますが、出来上がりのスープは濃厚な素晴らしい状態となっているでしょう。
中華食材で言う乾物は完全に干し上げた硬い仕上がりが主流ですが、炙り物はその中間にあたる良い所取りした製品であると考えております。生の状態の食材が持つジューシーな脂分と水分の瑞々しさと先に述べた干すことで得られる旨みの熟成・凝縮を兼ね備えた欲張りなものです。その2つの特色がバランスよく溶け合い絶妙の塩加減にて作られた製品は最高級の美味しさを持つものです。
しかし、最高の状態を迎えている時間はあまりにも短いもので出会う機会も非常に少ないところではあります。それは干物にも鮮度があり、時間が経つにつれて乾きが進行し、生の特色が失われていく事にあります。熟成が進み旨みが強くなるのではと思いますが生の脂分や水分がその分無くなり、硬く身質もパサついたものとなるわけです。
流通においては必ず時間を必要とするものであり、保存形態も冷凍手段を取らねばならないことも多くありますが、私共は専門店としてそれらをふまえた上での一番良い状態でお届けできるよう努力しております。
当店で扱う干物には、このような要素を最大限に生かした厳選食材を取り揃えました。
その中には昔ながらの職人さんの知恵が生きる名産品から全国から名を挙げる高級品、これが干物になったのか?というものまで幅広くご用意しております。
お求め安いように価格はもちろんですが、色々な種類が一度に楽しめるような商品化も考案中です。
もともと腹一杯まで食べる部類ではなく、少量でも充分堪能できるのが炙り物であると考えております。お客様がゆっくり一口ごとに味を噛み締めていただければと思っております。できればお酒と一緒に・・・